小説2 天使登場!セリアやで!
「はい、どーもセリアです」
どこか間抜けさを含ませた声に、意識が浮上する。
「現在セリアは、になにーのお部屋にいます。
これから、寝起きドッキリを仕掛けます。
きっと可愛い声で驚いてくれることでしょう」
「起きてますから」
目覚めた体をゆっくりと持ち上げて、ニーナはベッドから起き上がった。
…普通、そういうのは部屋に入る前にするものじゃないのだろうか?
「あ、起きた」
キョトンとしたような表情。
自分のイタズラが失敗したのに、特に残念がる様子も無いことから、結局これも「彼女」の狙った筋書きの通りということなのだろう。
……本当に……彼女、なのだろうか?
少なくとも、見た目は女の子だが。
どこまでもおちゃらけて、底を見せない彼女(?)。
…もし、男だったら、女性の部屋に勝手に入るなんて大問題なのだが。
しかし、妙な夢を見た。
起き抜けの溜息を吐くと、ゆっくりと意識が覚醒しだす。
「え?」
と、同時に疑問が沸き起こり、ニーナは顔を上げた。
「え?セリア、さん?」
「セリアやでっ」
なぜか無表情のまま力強く名乗る自称天使。
もちろん、名乗られずとも知っている。
「せりりーん、失敗?」
扉を少しだけ開けて顔をのぞかせた小柄な少女。
チヒロさん。
「え。ちーさん?」
「ちーだよぉ」
どこか間の抜けた声で名乗ったのは、セリアが名乗った所まで聞いていたからだろうか。
もちろん、知っている。
知っているが……知らない。
ニーナは勢いよくベッドから飛び上がると、部屋に備え付けられた洗面台の鏡を覗く。
「なに…これ」
毎日鏡を見るたびに見てきた自分の顔。
少しだけ色が残る銀髪。起き抜けのせいで少し顔色が悪いが細っそりとした頬。
普段からぱっちりとしている目は、今は大きく見開かれて鏡を凝視していた。
「これ…私?」
思わず口を突いて出たどこかのCMのような呟き。
「え」
「え」
セリアとチヒロが揃って目を丸くしてニーナを見る。
「になにー?記憶喪失?」
「顔にイタズラはしてないよー?いつもの可愛い.、にーにゃんだ!」
ちょっとだけ焦ったように2人が近づいて来る。
「あ…」
2人を見て、ゆっくりと記憶が浮かび上がってくる。
夢だと思っていた。
けど違った。
ニーナは今、確かに新たな記憶を持って、「クソゲー」の世界へ降り立った。